児童精神科医が説く/『子どもへのまなざし』レビュー

Amazonで高評価だったので読んでみたこちらの本。
初版が実に約20年も前(1998年)にもかかわらず、Amazonの売れ筋ランキング、子育て部門で高順位です。
埋もれず売れ続ける良書、という感じでしょうか。

なんと著者は、今年2017年6月28日に81歳でお亡くなりになっています。
正美というお名前から男性か女性か分かりにくいですが、男性です。
息子さんの佐々木文史郎さんが書かれているのでしょうか、「佐々木正美のコラム」という名前だったブログが、「正美のまなざし」に名前を変え、正美さん死後も書籍の引用を紹介する形で継続しています。

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すべての保育者に向けて

こちらの本、親に向けられただけの本ではありません。
親だけでなく、乳幼児に接する保育士、幼稚園の先生も含めた保育者全般に向けて書かれた本です。
乳幼児期は人格の基礎をつくるとき
しかも、やり直しが難しい。
『この時期の子どもに接する時は、その子どもの生涯にとって、とても価値のある時期に立ち会っているのだと考えて、誇りと責任をもっていただきたい』と説いています。

この乳幼児期の育児は、ひとことでいえば、子どもの要求や期待に、できるだけ十分にこたえてあげることです。
せんじつめればそれだけのことです。
しかし、それがなかなか十分にはできないのです。

親や保育者の希望ばかりを、子どもに強く伝えすぎてしまう、賞罰を与えるというか、そういうやり方で、早くいい結果をだそうとする。
あるいは、大人のほうがラクをしようとする。
そういう育児がよくないのです。

子どものワガママばかり聞いていたら、聞き分けのない子に育ってしまいそう?ですよね。
でも、そうではない、と著者。
乳幼児期は、子どもの希望をどれだけきいてあげても、その後に悪影響はないのだそう。
むしろ、周囲の人への信頼が育ち、自分に対する自信の感情が育まれるのだそう。

ヨーロッパで行われた研究の話も興味深いです。

乳児院で、赤ちゃんを2つのグループに分けて、一方は、泣いてもなにをしても深夜には授乳しない、昼間も規則正しく乳児院のやり方で定時授乳を守る。
もう一方は、子どもが望むたびに授乳し、子どもの要求にしたがってだっこや遊び相手をしてあげる。
最初のグループでは、たいていの赤ちゃんは1週間前後で翌日の朝まで泣かないでおっぱいを待てる子になる。
翌日の朝まで泣かなくなった子は、物分りのよい、忍耐強い子どもになったのか?
その後、何年にもおよぶ追跡観察の結果では、すぐに泣かなくなった子は、ちょっとした困難をすぐ回避しようとする、困難を克服するための努力をすぐ放棄する子どもに成長していったのです。
しかも、泣き止むしかなかった子は、周囲の人や世界に対する漠然とした、しかし、根深い不信感と自分に対する無力感のような感情をもたらしてしまうことが分かったのです。

今、夜泣きの改善方法として、泣いても放置する、という方法を紹介している記事をネットで多く見ます。
1回くらいなら大丈夫、夜以外にしっかり可愛がってあげれば大丈夫、と書かれていますが、こちらの本を読んで、本当なのだろうか?と思ってしまいました。
即効性があるもののほうが分かりやすくて受け入れやすいけれども、長期に渡る影響を見た研究成果に基づいた方法なのだろうか?

我が息子くんも4ヵ月くらいから夜泣きが始まり、職場復帰してからも夜泣きが続き、大変でした。
藁にもすがる思いでネットの情報を検索して、泣いても放置するアメリカ式育児を知りました。
でもやはり、泣き止むまで放置するのが可哀想でできず、時には寝不足でフラフラになりながら仕事をしていたのを思い出します。
あの時、安易にネット情報に手を出さなくてよかったぁ。
今思えば、「暑い」(うちの子、暑がり)とか「体調が悪い」(よく保育園で風邪をもらってきた)とか「体が痒い」(うちの子、敏感肌でアトピー気味)とか、泣く理由があったように思いますし。
当時は原因が分からなくて、授乳しても1時間で泣いて起こされることもあって辛かったけれども、努力しない子どもになってしまう事のほうがもっと辛いですからね。

さて、こちらの本には、乳幼児期の話だけでなく、学校に通い始めてからや、思春期の時期についての著者の考え方も示されています。
総ページ数321ページもあり、字も小さいです。
忙しいママが丁寧に読むのは難しいかもしれません。
時間のあるプレママの時に読んでおき、その後、ときおり見返すと優しい気持ちで子育てに望めそうです。

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