高濃度フッ素歯みがきは効く?子供に使える?/研究論文レビュー

虫歯予防に有効と言われているフッ素。
2017年5月頃から日本でも高濃度フッ素の歯磨き粉が販売され始めました。
今ではクリニカ、シュミテクト、クリアクリーンなど、ほとんどのブランドで高濃度フッ素配合の歯磨き粉のラインナップが用意されています。
いずれもフッ素は1450ppm入っています。
1ppm = 0.0001%なので、パーセンテージでいうと0.145%
2017年以前は最高1000ppmまでしか認められていなかったので、約1.5倍の増量です。
しかしながら、高濃度のものの方が良いのか?、子供に使えるのか?、色々と疑問が湧いてきたので、調べてみることにしました。

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高濃度フッ化物配合薬用歯みがきの注意

厚生労働省が2017年3月17日付で以下のような通知を出しています。
えっ、子供には使えない!?

フッ化物を配合する薬用歯みがき類で最も高濃度なものは、これまで、フッ素として1000ppm(0.01%)を配合するものでしたが、本日、これを超えるフッ化物を配合する薬用歯みがき類が医薬部外品として承認されました。
つきましては、今後、フッ素として1000ppmを超えるフッ化物を配合する薬用歯みがき類の使用上の注意として、以下の事項を直接の容器等に記載すること。

  • 6歳未満の子供には使用を控える
  • 6歳未満の子供の手の届かない所に保管する旨

「使用を控える」という控えめな表現なのは、おそらく、医薬品としてフッ素9000ppmのジェルが歯医者さんで既に使われているからでしょう。
「禁止する」や「使用させない」ということになると、医薬品としてもっと高濃度なものが使われていることと矛盾してしまいますからね。

実際の商品にも「6才未満への使用は控え、子供の手の届かない所に保管してください。」と注意書きされています。

なぜフッ素が虫歯予防になるのか?

さて、そもそもなぜフッ素が歯に良いのか?
ちゃんと調べたことがないのでこの機会に調べてみました。

食事により口の中が酸性になると歯のエナメル質からカルシウムとリンが溶け始めます。
しばらくすると、唾液により口の中が中性に戻ると溶け出したカルシウムやリンが歯の表面に取り込まれて再石灰化します。
フッ素があると、この再石灰化が促進されると同時に、エナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイトがより強固なフルオロアパタイトに変わって歯の耐酸性を高めます。
また、フッ素には虫歯原因菌の働きを抑える作用もあるようです。
こちらのサイトにメカニズムが分かりやすく解説されていました。↓

フッ素が歯を強くするのはなぜ?
歯の再石灰化作用を促進し耐酸性を向上させるから フッ素(F)とは自然界に広く分布する必須栄養素の1つであり、元素の名前です。地球上では単体で存在することはほとんどなく、フッ化ナトリウムなどの化合物として存在するので、フッ化物と呼ぶ方が正確で

濃度の高いフッ素の方が有効なのか?

1450ppmの最新の歯みがき剤は子どもに使えないとしても、じゃあ、どのくらいのフッ素だったら虫歯を予防できるのか?
ふと気になりました。
日本語のサイトでは、答えが見当たらなかったので、海外の文献を調べてみました。
こちらの総説では、↓のような記載がありました。
総説とは、多くの文献をまとめた文献です。

練り歯みがきに含まれるフッ素の量が多ければ多いほど、有効性がより高い。
500ppm以下のフッ素含有練り歯みがきの有効性は、統計的に有意ではないという結果であった。

引用 Fluoride toothpastes and fluoride mouthrinses for home use. Rugg-Gunn A, Bánóczy J. Acta Med Acad. 2013 ;42(2):168-78.

統計的に有意ではない、というのは、統計的に計算するとフッ素の含まれていないものと同程度の効果しかない→効果がない、という意味です。
表を見ると、250ppmと440-550ppmでは、( )内の数字がゼロをまたいでいます。
これは、有意差がないことを示しています。
つまり、効果を期待するなら、1,000ppm以上、ということです。
こちらの2013年発行の文献では、ヨーロッパでは1500ppm含有の歯みがき剤が一般的と書かれており、日本はかなり遅れていたのかもしれません。

また、こちらの文献では↓、1998年〜2008年に発表された、440ppmから1450ppmのフッ素含有練り歯磨きに関する研究が解析されていました。

練り歯磨きに含まれるフッ素は、未就学児の乳歯の虫歯を減らすのに有効であった。
低濃度フッ化物の練り歯磨きは、表面レベルでのみ有効であった。

引用 A systematic review and meta-analysis of the effects of fluoride toothpastes on the prevention of dental caries in the primary dentition of preschool children. dos Santos AP, Nadanovsky P, de Oliveira BH. Community Dent Oral Epidemiol. 2013 ;41(1):1-12.

やはり、濃度がある程度高いフッ素の方が効果ありそうですね。
そうなると、気になるのが安全性。

フッ素の安全性は?

ヨーロッパで1500ppmが一般的とはいえ、日本では安全性が確立されていないと判断されて6歳未満は使用を控えることになったのでしょう。
歯医者さんでは医師が適量取って使うので問題ないでしょうが、日常使いの歯みがき剤で美味しい味のものがあったりすれば、子どもが間違って多量に食べてしまう危険性がありますよね。

安全性については、歯医者さんのブログに詳しい解説があります↓。
多くの文献から考察して、通常の使い方なら問題なし、と結論付けています。

フッ素入り歯磨き粉は危険ってホントなの?(結論:ウソでした)
あれはいつのことだったか、ずいぶん前に『「フッ素入り歯磨き粉は危険!がんや骨肉腫、ダウン症の原因との指摘も」と…

また、2014年のシステマティックレビューでも、↓のような趣旨のことが書かれています。
システマティックレビューとは、質の高い文献を集め、データの偏りを除いて分析を行った研究です。

エンドウマメサイズ以上の量を摂取すると軽度のフッ素症を引き起こす可能性がありますが、6歳未満の子供の場合、フッ化物の練り歯磨きの使用は虫歯のコントロールに有効です。

引用 Fluoride toothpaste efficacy and safety in children younger than 6 years: a systematic review. Wright JT, Hanson N, Ristic H, Whall CW, Estrich CG, Zentz RR. J Am Dent Assoc. 2014 ;145(2):182-9.

さきほどのJ.Acta Med Acadの総説にも3歳〜6歳の子どもにはa small pea-sized amount of paste(小さなそら豆大)以上の量は使わないよう、と書かれていました。
適量を守ることが大事、ということですね。

フッ素歯みがきの効果的な方法

日本歯科医師会のホームページでは、6歳未満の子どもがフッ素配合歯みがき剤を使うときの方法として、以下を推奨しています。

  1. 使用量はpea-size(豆粒大)で幼児用歯ブラシの1/2の量を規準とする。
  2. 3歳未満では1日1回、3歳以上では1日2回(就寝時と他に1回)使用する。
  3. 幼児が白分で磨くときは、適量の歯磨剤を保護者が歯ブラシにとり、ブラッシングの間、監督する。
  4. 歯磨剤の吐き出しや洗口を練習させる。
  5. 使用直後の飲食を控える

引用 https://www.jda.or.jp/park/prevent/index05_12.html

大人の場合は、洗口量(ぶくぶくぺっの水の量)を最低限にしてフッ素が口の中に残りやすくすることも追加で推奨されています。

いろいろ調べた結果、高濃度歯みがき粉を使ったほうが良い!と判断しました。
6歳を超えた子供と一緒にこちら↓を使っています。
低発泡、低香味、低研磨で、甘味料にキシリトールが使われており、歯科医院でも売られていましたよ。
オススメです!

6歳未満の子供にはこちらがおすすめ↓

ウチでは/発泡剤無配合・キシリトール100%・フッ素配合のピドケアJr.
6歳未満の幼児には、どの歯みがき剤を使ったらよいか?配合成分比較してみました。

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