だっこで自分も幸せに/『脳はだっこで育つ。』レビュー

子どもはもうだいぶ重たくなっていますが、抱っこができる期間も短いことを考えると、抱っこをせがまれれば、多少の腱鞘炎でも、短時間でも、抱っこをするようにしています。
私の育児方針はどうなのか?と気になって手に取ったこちらの本。

著者は、桜美林大学リベラルアーツ学群の教授で、身体心理学や健康心理学を研究されています。
出版当初は准教授でしたが、2014年に教授になられたようです。
研究者だけあって、さすが根拠データが満載です。
一般的な育児論にとどまらず科学的にスキンシップがいかに重要かをやさしく解説されています。

十三世紀にローマ帝国で行われた実験では、
十分に栄養を与えられ、環境も清潔だったにも関わらず、抱いてかわいがること、話しかけることを禁じられた赤ちゃん50人全員が1歳の誕生日を待たずなくなってしまった。
160人の高校生と保護者が協力した著者ご自身の研究では、
乳児期にスキンシップの足りなかった子どもは、高校生になってからカッとなって衝動的に他者を攻撃する傾向が高いことが判明した。
などなど、スキンシップ不足が子どもの心身の育ちに、ときには命にかかわるほどの深刻な問題を生じさせることを紹介しています。

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キーワードはオキシトシン

オキシトシンは脳などで働く神経伝達物質。
母乳の分泌を促すほか、人との親密な関係を築いたり、愛情を深めたり、あらゆる対人関係に影響するため、愛情ホルモンなどとも呼ばれています。
さまざまな実験・研究によって、オキシトシンはストレス耐性を高める、体を健康にする、学習効果を高めるなど、たくさんの効果をもたらしてくれる物質であることもわかってきています。
温かいスキンシップをすると脳内でこのオキシトシンが作られて増えるのです。
しかも、スキンシップをするほうにもされるほうにもオキシトシンが増える、とのこと。

オキシトシンは、副作用のない精神安定剤のようなものです。
心がやすらぎ、幸福感や愛情も深まり、人とのきずなも強めるはたらきをしてくれる物質であることから、この先もっと注目されていくに違いありません。

そうなると、オキシトシンは手に入るのか?と気になるところ。
残念ながら、日本では陣痛促進を目的とした注射剤しか発売されていません。
海外では、オキシトシン点鼻薬が自閉症スペクトラムの改善薬として販売されており、個人輸入であれば手に入るようです。
でも、個人輸入の場合は自己責任ですから、ちょっと手を出しにくいですね。
副作用がないというのも少し言い過ぎで、オキシトシン注射剤の添付文書を見ますと、子宮過収縮や命にかかわるアナフィラキシーショック(アレルギーが全身症状として出るもの)、悪心、嘔吐、新生児黄疸などが副作用として書かれていましたので、医師や薬剤師の指導の元、使用したいものです。

オキシトシンレベルチェック!

こちらの本では、自分に日頃どのくらいオキシトシンがでているかを知ることが出来る10項目のチェックが紹介されています。

オキシトシンチェック
□人にはよく触れるほうだ
□夫(妻)とのスキンシップは多いほうだ
□子どもをよく抱っこやおんぶしたり、手をつないでいる
□子どもが寝るときは添い寝をしている
□子どもにキスやほおずりをよくする
□気心のしれた仲間で集まるのが好き
□初対面の人と仲良くなりやすく、信頼しやすい
□困っている人を見ると放っておけない
□親友と呼べる友だちがいる
□あまりストレスがたまらない

こちらのオキシトシンチェック、10項目のうち7個以上が◯であれば、オキシトシンがよく出ている、5〜6個であれば、まあまあ出ている、4個以下は、残念ながらオキシトシンの分泌が不足している、とのこと。
私、4個でした・・・
オキシトシンの分泌、不足しているんですね・・・ショック
子どもが大きくなって子ども関連のチェック項目が×になったら悲惨な状況になりそうです。

ちょい抱きのススメ

このオキシトシン、触れてから10〜15分で分泌量がピークとなり、その後1時間程度は触れなくても高い状態を維持できるそう。

とくに子どもとのスキンシップが足りないかなと感じた方は、意識して触れる機会を増やしてみてほしいと思います。
それも長くベッタリでなく、短い時間で抱っこしたり、ほおずりしたり、頭をなでなでしたり、ちょこちょこ触れるだけの「ちょい抱き」でもいいのです。
スキンシップを意識することで、親にも子どもにも両方にオキシトシンが増えていきますし、オキシトシンが分泌されることでプラスの相乗効果も起こります。
オキシトシンによってリラックスしたり、脳のストレスが取れたり、健康に影響がもたらされたりするほか、脳から「脳内麻薬」と呼ばれている快楽物質のエンドルフィンが分泌されて、穏やかで恍惚とした気持ちになり、幸福感が増していくのです。

こちらの本を読んで、ますます「抱っこを続けていこう」と強く思いました。
クソババァとか言われてしまう思春期にもちょっとしたスキンシップが有効なようなので、重くて抱っこができなくなっても、スキンシップを忘れないようにしなければ!

なお、著者のオフィシャルサイトはこちら↓

プロフィール - ようこそ 山口研究室へ

 

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