偉人の親はどうだった?/『わが子のやる気を引き出す育て方』レビュー

古今東西の偉人たちの生育環境にスポットを当てたこちらの本。
育児書を読んでいても「で、結局どんな大人になるの?」というのが分からないことが多いですが、こちらの本は、30人の偉人からレトロスペクティブに子育てを考えることが出来ます。
ちなみに、レトロスペクティブ研究(後向き研究)とは、疫学調査でよく使われる言葉で、カルテなどを見て過去を振り返って行う研究のこと。
反意語は、プロスペクティブ研究(前向き研究)で、予め計画を立てて、未来に向かって追跡調査していく研究です。
こちらの本と他の育児書との違いを考えた時に、ふと、昔習った疫学調査用語を思い出しました。

著者について。
本の末尾の著者紹介では、「松枝音楽心理研究所所長」とありましたが実態はよくわからず。
どうやらライターが本業のようです。
著書の一つである「実践的ライター入門」を調べてみると、どこかのホームページに「著者は、社会現象になったミリオンセラーを数冊手がけ、実に30年以上もコンスタントに年収1000万円を稼いできた超売れっ子ライター。」と書かれていました。
ですので、育児の研究者とか、そういう訳ではなさそう。

各偉人の育ち方は、大変参考になりますが、「子育てガイド」として書かれた著者の意見は、一つの事象をとらえて拡大解釈あるいは曲解しているように感じる部分がありましたので、そこは参考程度に読みました。

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夏目漱石と与謝野晶子

お札にもなっている夏目漱石さんと与謝野晶子さん。
30人の偉人の中で最も印象に残ったお二人。
お二人とも不遇の幼児期を送ったという点で共通しています。

江戸の代々名主の家に生まれた夏目漱石さん。
父51歳、母41歳の時に8人兄弟の末っ子として生まれます。
2歳のときに父親の知り合いの家に養子に出され、愛情に恵まれず育ちます。
生まれたときから厄介者扱いをされ、親許から離されて育ち、養父母は、夏目家に恩を売っておこうという打算から引き取っただけ。
誰からも褒められず育ったのでしょう。
誰からも励まされず育ったのでしょう。
でも、素晴らしい文学を残す偉人となった。

与謝野晶子さんも似たような境遇です。
大阪で三女として生まれますが、男の子ではなかったことに落胆した父親が家に寄り付かなくなってしまったために、乳母付きで親戚に預けられてしまった。
男の子が生まれた二年後、ようやく生家に戻りますが、意地悪な乳母に育てられる状況は変わらなかったそうです。
父親から無視され、母親からも充分にかまってもらえず育ったけれども、日本を代表する歌人となった。

夏目漱石さんと与謝野晶子さんに共通しているのは、どちらも教育だけはしっかり受けられたこと。
愛情には恵まれなかったけれども、本には恵まれたのでしょう。
自分と周囲を客観的に見ることができる聡明さも持っていたのでしょう。

子育ての細かいことに一喜一憂しなくてもいいんじゃないか、
子どもには、教育環境を整えてあげて、読書をして「自ら考える」ことを教えてあげれば、それで充分ではないのか、
そんな気になりました。

書かれている偉人は、上記のお二人のほかは、タイガー・ウッズ、ライト兄弟、ショパン、ケインズ、ロダン、ガリレオ、モーツアルト、吉田松陰、勝海舟、ニュートン、リンカーン、平塚らいてう、エジソン、宮沢賢治、津田梅子、カザルス、ゴヤ、ロマン・ロラン、カーネギー、カント、キング牧師、ハイドン、サン・テグジュペリ、西郷隆盛、ゲーテ、マーク・トウェーン、タゴール、ココ・シャネル。
これだけ幅広い偉人の話をコンパクトに知ることができるという意味で、一読の価値があるかと思います。

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